toripiyotan

何回もおなじこと喋る

⚫︎創作/サスペンス

アブストラクト[ショートストーリー]

彼はいつも私に理解できないものを描いていた。キャンバスは黒く、あるいは赤く、あるいは灰色で、獣が噛み合っているか、あるいは人がまぐわい合っているか、締めあっているような、どうとも表現のしようがないものばかりだった。彼の絵はごくたまに高額で…

Based on Lies[ショートストーリー]

※希死念慮の描写があります 二歩。 (間も無く列車が参ります) 二歩でいい。 (白線の内側まで下がってお待ちください) 二歩踏み出せば全て終わる。 (間も無く列車が参ります) 何時間経った?いつまでぐずぐずしているんだ。たった二歩を踏み出せば僕は…

アオとその両親が乗る自動車が事故を起こしたのは祖母宅から帰る山道でのことだった。 大きく広がる角を戴いた牡鹿を避けようと思わずハンドルを切った車は狭いセメント敷の道路を逸れ舗装のない木立のほうへと突っ込んでいった。幸い巨木がバンパーをひしゃ…

星と井戸[ショートストーリー]

※注意 暴力、虐待に関する表現があります。 地下はそりゃあ酷い臭いだったよ。汚物も食べ残しも腐ったものも腐れないものも街中からいっしょくたに集まってくるんだから。それをコンベヤーの上にぶちまけてひたすら分別していくんだ。とんでもないものが混ざ…