toripiyotan

何回もおなじこと喋る

クマと甘夏ジャム

有機栽培の甘夏を買った。その隣にはいちごがツヤツヤと美味しそうだったけれど、なんとなく、目的もなく甘夏にした。そして家で買ったものを広げながら「ジャムにしよ」と思いついた。

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有機栽培あまなつ4玉395円

まずはレシピを検索するところからだ。現代は簡単にクリエイティブ欲求が満たせる。大昔ならば身近な人からの口伝えと試行錯誤の経験、昔ならばなかなかアクセスできない立派な書物、少し前ならテレビや雑誌などから与えられる情報から何かの作り方を学ぶしかなかったのに、今はブログやらクックパ…やらサイバー上に滂沱の如く溢れ流れている。そこから必要な時だけちょいと覗いて拝借すればいいのだ。覚える必要どころか書き写す必要さえない。わたしが子供の頃はわかったさんシリーズやひとりでできるもんを図書館でせっせとノートに書き写していた。便利になったものだ。情報のアウトソーシング

 

甘夏ジャムの各人のレシピで口を酸っぱく語られているのが「皮のしぶさを抜くために下処理をしっかりしろ」ということだ。水にさらしてもみ洗いを5回以上繰り返せだの、茹でこぼしを3回以上しろだのと、めんどくささ以上に栄養全部抜けそう…と消極的な気持ちになってしまう。そもそもジャムにしないならば食べずに捨てるものに対して栄養抜けるも何もないだろう。しかしわたしはポテトサラダのじゃがいももぜんざいの小豆も茹でこぼしをしないことでおなじみの「栄養抜けるの怖いヤダ」のとり。ビタミンCは極限まで絞りとって摂取したい。

 

そんな自分の中での葛藤は、一度目に水で茹でてみた段階で味見をして決定しようということで一旦おさまった。ようやく着手である。丸ごとよく洗った甘夏の表面に包丁で切り込みを入れ、そこからブシュー!とならないよう慎重かつパワフルに親指を使って皮を剥いていく。わたしはこのブシュー!が嫌い。あちこちベタベタになるから。剥いた皮を細く細かく切る。この前に白いワタのところを削ると苦味が減るらしい。わたしは剥くのが下手だったのであまりワタが皮の方に残らなかった。

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千切りにした皮

この様子、なんだかマーマレードっぽいな…と思ったところでわたしの頭の中に赤い古びた帽子をかぶる小柄なクマが登場する。パディントン…!ここから先、わたしの孤独な作業にずっとパディントンが寄り添ってくれた。彼がいなければ正直やり遂げられていなかったかもしれない。

 

皮を茹でている間に、実の方にも取り掛かる。こちらはベトベト必須の作業。汁ブシャー!もやむを得なし。写真の取りづらさこの上ない。海老の背わた取りのように、みかんの房の背中に切り込みを入れて

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ぱかっと開いて中のタネをより分けて

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薄皮から中身をもりもりっとむしり取る。

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はじめの内は楽しい。上手く取れるじゃないのもりもりもりもり。しかしやってもやっても終わらない。見るたび増えている気がする(そんなことはない)。なんの修行なのか。わたしは一体どうしてこんなことを始めてしまったのか。手はベトベト、テーブルはびしゃびしゃ、山盛りのみかんの房、タネ入れに間違えて置いてしまう薄皮。そんなわたしの脳裏に、クマが語りかけてくる「大丈夫です、頑張ればすぐに終わりますよ」パディントン…!「美味しいマーマレードにするには、準備が大事なんです。ルーシーおばさんもよく言ってました」パディントン…!!!ありがとうパディントン、映画すごくよかったよ。こないだ2を見たんだけど、感動して泣いちゃった。あんな風にルーシーおばさんたちと出会ってたんだね。それにしても刑務所だなんて全くクマに優しくない街だよね。でもパディントンが持ち前の親切さとジェントルマンシップですっかり周囲と友達になってしまうところはハラハラしたけど楽しかったな。マーマレードのおかげだね。パディントンがオレンジをスンスン嗅いで吟味するシーン好きだったなぁ。これは甘夏っていうんだけどね、パディントンが嗅いだらなんて言うかな。悪くないって言ってくれるかな。種類が違うから戸惑ってしまうかもね。ところでカリーさんの……

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グツグツ

薄皮を剥き終わったら鍋に実ときび砂糖を入れて混ぜ、茹でて水で洗った皮部分も加えて火にかけた。砂糖の分量は総重量の何%くらいとレシピがあるようなのだが、なんせ秤のない家、ケーキもクッキーも目分量で作るとりなので、ザバーーーーーッ。甘さが足りなかったら後で足せばいいのよ。ちなみにとろみをつけるためタネを一緒に入れて煮るのだが、これまたタネをまとめるお茶パックなんてものもうちにはない。あとでタネを取り除ければなんでもいいのだと思い、わかりやすい丸々と太ったタネを50粒数えて投入した。ちなみに煮詰め終わって数えながら取り出していたら、51個回収できた。どうして……。

 

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完成した甘夏ジャム

このようにして出来上がった甘夏ジャム。水分シャバシャバがよかったので、とろみ控えめで煮詰めすぎない程度にした。甘さ控えめで、酸っぱくてほろ苦い。

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完成した甘夏ジャム

ほろ苦い……っていうか

に が い !!!!!!

美味しいな〜って食べた後に舌に残る渋み!苦味!!どうしてあんなに口酸っぱく水に晒せもみ洗いしろしっかり茹でこぼせと繰り返されているのかわかった!最初は美味しくてもかなり苦いわ!なるほどね!?次回は慌てずじっくり水につけて苦味を抜こうと思う。あぁパディントンそんな悲しげな顔しないで。

 

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チーズ甘夏ホットサンド

植物性シュレッドチーズと一緒にパンに挟んで食べたら、苦味が緩和されて食べやすかった。こうして消費していって、次作るときはもう少しだけ下処理を頑張ろうと思う。

 

「おいしく作るには丁寧な準備が大事なんです。ルーシーおばさんも言ってました」

クマうるさい。